執筆からデータづくりまで
「一太郎」を使って快適に執筆・印刷用のデータ作成をしてみよう!
作品の執筆は、Microsoft Wordや一太郎をはじめとしたワープロソフトや、スマートフォンのメモ、小説投稿サイトの編集画面、テキストエディタ、あるいは専用メモ機器、手書きなど……実にさまざまな方法で行われます。
しかし、中には「書けたけれど、どうやって本にすればいいのか?」「本作りのための設定をどうすればいいのか?」という壁にぶつかってしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「一太郎」で執筆・データ作成
今回は数ある執筆ツールの中でも、執筆から印刷用データの作成までをサポートし、プロ作家から創作愛好者まで広く親しまれる日本語ワープロソフト「一太郎」(ジャストシステム) を例に、文章の執筆と表紙データ作り、印刷用データの作成の方法をご紹介します。
こちらでご紹介している機能のほかにも、文書入力中に辞書を引く、手軽にふりがなを振る、半角英数字や記号の縦中横を一括設定する、など「本作り」に特化した便利な機能が多数搭載されています。
(※下記の掲載内容は冊子『本を書く、作る。』(株式会社ジャストシステム・一太郎開発チーム発行、2017)より、発行者の許可を得て抜粋・再編集したものです)
1. 画面設定を選び、執筆する
一太郎には、さまざまな画面や機能があります。
文章の執筆や本作りをより快適に行うため、執筆環境を整えましょう。キー操作や入力方法も選べます。
一太郎がはじめてでもご安心ください。
一太郎の画面
書斎机に見立て、すっきりと落ち着いた画面です。
[ジャンプパレット]では、ページや検索、見出し、文書校正の指摘個所にジャンプできます。
[ツールパレット]には文書作成でよく使う機能が集まっています。編集画面を広く使いたいときは、どちらのパレットも閉じることができます。
一太郎をオーダーメイドする
▲[ツール−オーダーメイド]
使い方や好みに合わせた画面構成や操作環境を、[オーダーメイド]で作ります。
小説などの文章作成が中心で、シンプルな画面で執筆のみに集中したい方は[かんたんオーダー]で[もの書き]を選ぶと手早く設定ができます。
執筆だけでなく、本も作る方には[こだわりオーダー]がおすすめです。
[編集]では編集画面の動作を設定します。
▲[こだわりオーダー−編集画面]
スクロール開始位置を調整しますか?
長文執筆の際、画面上での視線の位置が書き心地にも作用します。小説家の方の声で生まれたこの設定、執筆に集中するときは[中央寄り]がオススメです。
縦組文書のスクロール方向を選びましょう。
一太郎では縦組み文書は横方向にスクロールします。段組文書で視線の移動が気になる方や、Wordと同じ操作性で使い方は[縦方向]をお試しください。[操作]ではメニューやキー操作の設定をします。
▲[こだわりオーダー−操作]
シンプルメニューを利用しますか?
[通常]を選びましょう。本作りに必要な機能が含まれています。
入力アシストを利用しますか?
[行頭のスペースを挿入する][行頭の開き括弧・改行の前の空白を削除する]をオンにすると、地の文は行頭を字下げし、会話文は字下げしない入力が自動的に行われるようになります。
[括弧の補完]をオンにすると、括弧の入力で対になる括弧が入力され、カーソルを括弧の中に移動します。これをオフにして[閉じ括弧で改行する]をオンにすると、会話文を閉じたときに自動で次の行に移動します。
執筆のスタイルやリズムにより、入力アシストの使い勝手は変わります。どうぞ好みの設定を見つけてください。
キー割付を選びましょう。
一太郎をはじめてお使いの方、Wordとの併用などで操作に迷う方は、[Windouwsキー割付]を選びましょう。
小説用ファンクションキーセットに切り替えますか?
[小説用]を選びましょう。
小説用ファンクションキーセット
▲小説用ファンクションキーセット
小説特有の入力や傍点付加をスムーズに行える機能など、マウスへの持ち替えをできる限り減らすことにこだわったキーセットです。
小説用三点リーダ・小説用ダッシュ
小説や記事でよく使われる三点リーダ「……」やダッシュ「——」を素早く入力できます。
1回の操作で、2文字ずつ入力され、自動的に密着割付されます。
好みのキーに機能を割り付けることで、ワンタッチでの入力が可能となり、執筆効率が格段に向上します。
小説用傍点
小説などで、意識させたいことばや文章に付けられる傍点。
手書きで文字に点を打つような感覚で、カーソル位置の文字に傍点を付けられます。
好みのキーに割り付けて連打することで、次々と文字に傍点が付いていきます。
括弧や句読点などには付かないようになっているため、傍点付けがスムーズにできます。
2. 「文書校正」で文章をチェック
文章を練り直す推敲のステップでは、文章の誤字脱字や表現のほか、小説の作法も確認しておきましょう。
文書校正
[校正]パレットで、[校正設定]を選択し、[実行]をクリックします。指摘内容を確認して、修正を行います。
小説用の校正設定もご用意していますが、好みの設定を作ることができます。
会話や擬音語の校正
登場人物のリアルな会話。さまざまな音や声、気配を表すことば。あえて選んでいることばが過剰に指摘されないよう設定することで、校正をスムーズに行えます。
▲[ツール−文書校正−文書校正の設定]
■ら抜き表現・くだけた表現
会話文ではくだけた表現を許容するが、地の文はしっかりチェックする場合、[括弧内もチェックする]をオフにします。
■擬音語・擬態語
擬音語・擬態語の過剰な指摘を抑制する場合は、[擬音語・擬態語]をオフにします。
小説作法の校正
小説や商業用文章には、三点リーダ(……)やダッシュ(——)を偶数個ずつ使うことを、作法とする場合があります。?や!、括弧などの小説における約物の作法もチェックします。
- 「……」「——」は偶数個
- ?や!の後には空白
- 閉じ括弧(」)の前の句点(。)は省略
- 地の文の行頭は一字下げし、会話文は字下げしない
3. 文字組(組版)をする
字間・行間など、適切にレイアウトされた文書は読みやすく、仕上がりの品質を高めます。
作品や読み手に応じて、書体や文字サイズなど工夫してみましょう。
きまるスタイル
▲[ツール−文書スタイル−きまるスタイル]
用途に合ったレイアウトを一発で選べる[きまるスタイル]には、冊子のレイアウトを豊富にご用意しています。A5判やB6判、文庫(A6)判のほか、新書(105×173mm)のスタイルも搭載しています。[本・冊子]を選び、一覧からスタイルを選びます。
※印刷所への入稿データなど、本文ページに絵や写真などを用紙のフチまで配置する場合、用紙サイズを「塗り足し」の分、大きく作る必要があります。[用紙サイズを塗り足し分大きくする]をオンにすると、版面のレイアウトを保ったまま、用紙サイズのみ大きくすることができます。
※印刷所の入稿データや入稿方法について、詳しくは印刷所にご確認ください。
文書スタイル
[きまるスタイル]で選んだスタイルを調整したり、一からスタイルを作ったりするときには[文書スタイル]で行います。
▲[ファイル−文書スタイル−スタイル]
冊子の作成では[見開き印刷]をオンにします。本文の字数・行数を設定する際、字間・行間を保ったまま調整する場合は、文字設定で[字数・行数を優先しない]を選んでおきます。
ぶら下げや追い込みなどの禁則処理は[体裁]で設定します。
縦組の冊子を作るときには、[ベース位置]を[行中]にするのがおすすめです。
[縦組みの見開き印刷時に行の位置を揃える]をオンにすると、ページの表・裏で本文の行の位置が合いやすくなります。
柱
柱は[ヘッダ・フッタ]で設定します。奇数・偶数ページで別の柱を表示することもできます。
▲[ファイル−文書スタイル−ヘッダ・フッタ]
■見出しと連動する柱を表示する
短編集などのタイトルと連動した柱を自動的に表示することができます。
あらかじめ、本文中の各話のタイトルに目次行を設定しておきます。
(※目次にしたいタイトルや見出しの行を範囲指定し、[文書編集]パレットの[目次行設定]でレベルに合わせて[目次1]などをクリックすると、目次行が設定できます)
[ヘッダ・フッタ]画面で[見出し連動タイプ]を選びます。[見出し]から目次レベルを選択し、「%1」などと入力されたことを確認します。自動でタイトルが表示されるようになります。
■ノンブルと柱をまとめて表示する
[記号]で[%P]を設定します。
4. 表紙を作る
一太郎のコンテンツに含まれる絵や写真と、タイトル文字を組み合わせて、表紙を作ることができます。
絵や写真を使う
[絵や写真の挿入]で[イラスト][写真]から好みの絵や写真を選びましょう。手持ちの画像を使うときは[フォルダーから]を選びます。
▲[挿入−絵や写真−絵や写真の挿入]
タイトル文字をつくる
[モジグラフィ]を使うと、デザインを選ぶだけで、印象的なタイトル文字を作れます。
▲[挿入−タイトル文字−モジグラフィ]
作ったタイトル文字は、文字ごとに作図データになるので、あとから一文字ずつサイズや色、配置をアレンジできます。
▲[作図]ツールパレット
5. 印刷用データとして保存
文書を保存する
一太郎形式(JTD)で保存します。
[他形式も同時に保存]をオンにすると、PDFやテキスト形式も同時に保存することができます。
▲[ファイル−名前を付けて保存]
印刷所にデータ入稿して本を作る
▲[ファイル−アウトプットナビ]
[アウトプットナビ]の[冊子作成]で[印刷所にデータを入稿する]を選び、入稿データを保存します。
※入稿データや入稿方法について、詳しくは印刷所にご確認ください。
次は印刷・製本について解説するよ!