文学フリマ五周年記念文集
「文学フリマ五周年記念文集」は、文学フリマの開催五周年を記念して2007年の第五回文学フリマで販売されました。
残部はAmazon.co.jp で販売していました。
現在は販売しておりませんが、その一部を下記ページにて公開しています。
価格
¥500
内容紹介
大塚英志の『不良債権としての文学』から出発した文学の同人誌即売会、文学フリマの五周年記念文集。
来場参加者・出店参加者、それぞれの立場からの寄稿集「五周年に寄せて」。
第二回以降、事務局代表を務める望月さんが文学フリマの歴史について書いた「文学フリマの軌跡」。
各回のアンケート集計結果から人気出店者や売れ筋商品について書いた「アンケートにみる文学フリマ」。
運営事務局内部の声を集めた「関係者のつぶやき」。
ネットや印刷媒体から文学フリマに関する記事を集めた「Fレポート」など。
目次
- 巻頭言
- P3 書き手:望月倫彦
- 目次
- P4
- 五周年に寄せて
- P5〜P11: 来場参加者・出店者、それぞれの立場からの寄稿集
- P6: 「平野謙教授の寸鉄」 幻魚水想記の会 野田吉一
- P6: 白水Uブックス研究会
- P7: 「擬態するエッセー」 灰根子
- P7: トム・ヨーク
- P8: Studio Zero
- P8: 柳川麻衣@痛覚
- P9: Bの方
- P10: うしおだ まなぶ
- P10: 「自由な創作の遊び場を」 野田光太郎(無手勝)
- 文学フリマの軌跡
- P13〜P42: 文学フリマの歴史。書き手:望月倫彦
- P14: 文学フリマって何?
- P14: 文学フリマのはじまり
- P16: 第一回文学フリマ開催までの経緯
- P19: 第一回文学フリマ
- P21: 第二回開催に向けて
- P29: そして第三回へ
- P31: 幻のトークショー企画
- P33: 青山ブックセンターの閉鎖と新会場探し
- P39: 第三回文学フリマ
- P40: 秋葉原
- P41: 第四回文学フリマ
- P42: 今後の展開
- 第一回文学フリマ時の手書き注意書き
- P44〜P45: 出店者に対する心構え・注意など。書き手:大塚英志
- アンケートにみる文学フリマ
- P46〜P49: アンケート結果から見える考察など。書き手:木棚環樹
- P46: 人気出店者&売れ筋商品
- P47: 岐路に立つ文学フリマ
- 関係者のつぶやき
- P51〜P68: 運営事務局内部の声。
- P52〜P65: 文学フリマは空っぽの箱 書き手:木棚環樹
- P56: 制度から逃れるために
- P58: アンデパンダンでインディペンデントなイベント
- P60: これは文学ではなくただのコミケです
- P65〜P68: 文学フリマの遠景 書き手:米の倉
- Fレポート
- P69〜P92: ネットや印刷媒体から文学フリマに関する記事を転載。
- P70〜P71: 文学フリマに新市場の熱い底流を見た 山川豊太郎
『文芸研究月報』二〇〇二年一一月号通巻二十三号より - P71〜P72: あれれ日記 雪樹
『文芸研究月報』二〇〇二年一二月号通巻二十四号より - P72〜P73: 第1回文学フリマレポート 赤井都
『文芸研究月報』二〇〇二年一二月号通巻二十四号より - P73〜P75: 「第1回文学フリマ」に学んだ文芸同人誌マーケティング論> 鶴樹
『文芸研究月報』二〇〇三年一月号通巻二十五号より - P75: 文学フリマへ 三崎尚人
同人誌生活文化総合研究所http://snownotes.jp/より - P87〜P92: 「文学フリマ」ノート 中沢けい
豆畑の友 http://www.k-nakazawa.com/より
- 編集後記
- P93〜P96: 編集後記
- P94: 日比野真衣
- P95: 米の倉
- P95〜P96: 望月倫彦
著者からのコメント
私が文学フリマ事務局に参加しようと思ったのは、イベント設営に興味があったからです。私は今年第五回から新しく事務局メンバーとなりました。丁度参加し始めた時期に、自分が主催のライブイベントを開催することになっていました。文学フリマほど大規模ではありませんが、一つのイベントを作り上げるということに達成感を感じ、もっとイベントに身を置きたいと思ったのです。(日比野真衣)
これを書いている現在の時刻は朝の一時四十七分。
軽い気持ちでこの文集の編集/デザインを引き受けたのが二ヶ月前。頁数が足りないので何か原稿を書いてくれと言われたのが一週間前。
HP上で公開された文学フリマのレポートの転載許可が下りたから追加してくれと言われたのが二時間前。
何故、入稿の二時間前になっても原稿が揃わないのか俺にもわからん。
気がつけば、たばこ二箱吸っている。(米ノ倉)
これ以後の純文学が映像化することを前提とした、もしくは前提としないまでも映像化可能な純文学群であり、映像化によって経済的に成立しているのだとすれば。映画のカット割である漫画もまた純文学の一形態であり、手塚治虫が映画監督志望の漫画家で、あくまで漫画を映画原作のカット割りだと考え、アニメを本編と呼んだ様に、純文学もまた本編を生み出す映画産業の一端でしかない。自信なさげにうつむきながら「これは文学でなくただのコミケです」とつぶやいてみる。(木棚環樹)
自分が文学と信じるモノをカタチにして誰かに届けようとする人たちをずっと見てきた。地元のお祭りのような、学園祭のような、強い熱気がそこにはある。第一回文学フリマを体験したとき、この熱気は一体なんなのだろうと考えた。きっと文学には、すべての人に青春を取り戻させる力があるのだと信じた。たとえ老人でも、学生でも、文学を通じて青春を手にできる。それが文学フリマなのだ。みんなの青春を終わらせたくない一心で、この五年間を続けてきた。文学フリマは私の青春だった。そして今でも、これからも、青春そのものだ。(望月倫彦)
抜粋
「アンケートにみる文学フリマ」
・人気出店者&売れ筋商品
一般に第四回文学フリマの主役と言えば、開場前に三百人のお客さんの列を作り、四百冊完売した後も問い合わせが絶えなかった、桜庭一樹&桜坂洋コンビのblack cherry bobなんですね。プロの作家さんが出店というだけでも、それなりの集客が見込めるのですが、桜庭一樹は出店前の活字倶楽部のインタビューで、文学フリマについて語り、black cherry bobでトークショーも開き、トークショーの内容も文学フリマ出店関連のみで、そのトークショーの入場チケットが文学フリマで売る新刊「桜色ハミングディスタンス」の引換券になっているというサービスのしよう。前売り交換チケットだけで百枚以上売れてしまった超豪華ユニットだったのですが、文学フリマはプロの既成作家にしか見所がないのかというと、そうでもない。
来場者アンケートの「このイベントで印象に残ったサークルと本」を見ると、サークル: アザーズ四票/白水Uブックス研究会四票/black cherry bob三票/グレ&画伯三票と、black cherry bobを越えるサークルが二つもある。本にしても、戦争文学がこんなにわかっていいかしら三票/桜色ハミングディスタンス三票/アザーズ二票/大塚英志は悪人なのか二票と、白水Uブックス研究会の戦争文学がこんなにわかっていいかしらが、プロ作家二人と同数の人気。
ここで各人気出店者について調べてみると、アザーズは、「ブギーポップは笑わない」でデビューした上遠野浩平のファンサイトから派生した出店者で、公式HPを見る限りイラスト入り四ページのお試し版フリーペーパーの気合が入っているライトノベル系創作サークルだ。
対する白水Uブックス研究会は、白水Uブックスの読書会・勉強会を定期的に開いている純文学系研究サークルだ。元々はラテンアメリカ文学研究会であったことを見ても、かなり硬派でしっかりしている。
ライトノベルと純文学、創作と研究会とかなりカラーは違うが、共通しているのはどちらも公式HPを持ち、フリーペーパーに力が入っていて、かなりの数のフリーペーパーを会場で撒いていた事だ。このアンケートの人気サークルと人気本は必ずしも一致せず、サークル部門はお客さんの呼び込み集客、フリーペーパーの質と量といったパフォーマンスが反映され、本部門は本の内容や満足度が反映されることが多い。
ちなみに第三回文学フリマの同アンケート結果を見ると、サークル部門はburai四票/有害図書愛好会三票/暗黒通信団二票/波状言論二票/スウェードキルシュ二票/ジャンクヤード二票/SFjapan二票と、大塚英志&白倉由美のスウェードキルシュや東浩紀の波状言論、徳間書店のSF雑誌「SFjapan」を抑えて、日本大学芸術学部文芸学科の老舗文芸サークルが一位に輝いている。文芸学科という質の高さに加えて、当日会場に出店者とも来場者ともつかない日大芸術学部の学生を数十人集めていたが、身内だろうがなんだろうが自分達の客を数十人フリマ会場に集客したということが勝因だと思う。
有害図書愛好会は一見十八禁ぽいが、銀河英雄伝説に出てきたサークル名から取ったという一九九八から続く老舗ライトノベルサークルで、魔法ファンタジー小説の幻影魔術綺談連作は九冊目。テキストジョッキーと呼ばれる同人誌の書評も作っており、他のサークルとの交流にも積極的だ。
本部門の投票結果は幻影魔術綺談(有害図書愛好会)三票/Progressive(ジャンクヤード)二票/作家達の夢束(作家たちの夢束)二票となっている。buraiは号数ごとに票が割れたのが痛い。Progressiveはジャンクヤードの短編アンソロジー集。作家達の夢束は、三百名のメンバーを要するメーリングリストから生まれたサークルのアンソロジー集。buraiと並んで、サークル参加メンバーの多さが直接票につながっている。
第三回では有害図書愛好会やジャンクヤードといった、コミケの老舗出店者による本が人気だったのに対して、第四回では白水Uブックス研究会・アザーズといった文学フリマ独自の出店者が人気上位に来ている。これは第三回に会場を移った事で立ち読みスペースができ、第三回のときの立ち読みスペースで生まれた評価が、一年かけて他の来場者にも広がり第四回のアンケートに反映されたものだと考えられる。少しづつではあるが、文学フリマ発の書き手が育ってきている。